余命宣告病棟第二話「余命宣告病棟と彼女」
余命を宣告される人も辛いだろうがする側と言うのもキツイものだ。
それを私は体験してる。
この病棟に来て何度目だろうか……。
その顔はいつも衝撃的だった。
家に帰るといつも思っていた。
この病棟は残酷だと……。
誰が作ったかは知らないが余命宣告を受けた者を閉じ込めておくだけの病棟。
自由は効くし食事制限もほとんどない。
庭や屋上と診察以外は自由だ。
私はそんなところに配属された。
衝撃的だった。
狂った人間を日々見続けるのは結構キツイものだ。
だからと言って逃げ出せるわけではないのでただ無感情で仕事をすることで逃げていた。
いつしかある二人を見守る様になった。
まずは彼。
物静かでいつも中庭で本を読んでいる。
周りに寄る者は居ない。
一人きりだ。
家族はと言うと彼の要望であまり見舞いには来なかった。
彼が頼んだものを持ってくるだけで挨拶程度しかしたことはない。
診察も一人で話を聞き一人で余命を受け止めてる。
もう一人は彼女。
わははとよく笑う人で周りにはいつも人が集まっていた。
みんな彼女が天使のように感じていただろう。
優しくて人を和ませた。
家族はいつも心配していたが彼女は『大丈夫』だと言って笑っていた。
そんな正反対の二人を私は担当していた。
彼女はいたずら好きでよく私にいたずらを仕掛けては失敗して悔しそうにしていた。
子どもの仕掛けた罠などに引っかかるほど私も子どもではないしいつも頭を撫でてやった。
その度に気持ちよさそうにする彼女は『死』なんて感じさせなかった。
私との診察はいつもわははと笑いながら過ごす。
バカなこととか多くそれは彼女の日常なんだろうなぁと思った。
「せんせー。温泉行きたいでーす」
「却下」
「ちぇー」
口を尖がらせて笑う。
受諾出来ないなんて知っていて言う。
ここから死ぬまで出れないと知ってるはずなのに……。
それでも彼女は私に向かってそう言う提案をしてくる。
冗談なのか願望なのかそれは私には知る由もなかった。
何故なら彼女は最期まで変わらなかったから……。