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始導-Shido-第二話「天翼狩りと運命」4

裏通りからの帰り道。
話し込んでしまったようで外は真っ暗になっていた。
急いで帰らねばとアリスは早足で歩く。

向かいからフードを深く被った二人の人が走ってきた。
避けようとすると避け切れずぶつかってしまった。

「どこ見て歩いてんだよ!」

片割れはそう言うとぶつかった人を立たせる。
ちらりと見えたのは長い耳と綺麗な翼だった。
見とれていると後ろから足音と共に声がする。

「あっちに行ったぞ!」

「天翼族(オルニス)だ!逃がすな!」

その声に二人はビクっとして慌ててフードを深く被る。

「あなた達追われてるの?」

アリスは話しかけるとぶつかった子が小さな声で話す。

「天翼族狩りに遭ってるの。助けて下さい」

その言葉にアリスは踵を翻し二人の手を引き声とは反対に走る。

「着いて来て」

くねくねと曲がる裏通りを走り抜ける。
声は完全には消えていないことを確認してアリスは上を見る。

「ねぇ、あなた達飛べる?」

その質問に翼をバタつかせる。
それを見てふわりとアリスも手を引き飛ぶ。

やや高めの建物の上から三人は息を潜めていた。
声は裏通りをぐるぐると回ってなかなか消えない。

「よし、ここにいて。アリスがおとりになるから2人は逃げて」

そう言うと立ち上がり丁度良さそうなところを探す。

「でも貴女が・・・」

心配そうな声で話す子にニコッと笑う。

「アリスにはパパがいる。それにこう見えて戦士だから任せて」

アリスはそう言い残すと下へと降りる。

「そうだ、名まえなんて言うの?」

アリスは上に向かって喋る。
2人は顔を見合わせ小さく答えた。

「私はカシャ」

「俺はイルト」

その答えを聞いてアリスは笑いその場を後にした。

「避けられぬ運命なのでしょう・・・」

仮面の男は呟く。
暗く闇の中からその姿を見つめる。

宿に帰るもアリスはおろかレイフォルトもいない。
ディクセンは慌てて宿の外に出た。

「どこに行ったんだ・・・?」

どこを探すべきか分からず困っているとまたあの仮面の男が現れる。

「探し者は見つかりましたか?」

何かを楽しんでるような声にディクセンは苛立つ。
だが、こんなとこで遊んでる暇はない。

「残念ながらいないな。もし、知ってるなら教えて貰いたいとこなんだが・・・。確かな情報、ならな」

男は「くつくつ」と笑う。
そして静かに街の外の森を指す。

「忠告はしましたが運命には逆らえなかったようですよ。街の騒ぎを聞いてみなさい」

そう言うと闇にすぅっと消えていった。

ディクセンは嫌な感じを胸に街の騒ぎについて聞く為に近場の酒場に寄った。
そこで天使狩りという名の人狩りが今起こってることを知る。

もしそれがアリスのことならばマズイ。
慌てて酒場を出ると裏通りの入り口にレイフォルトと思しき人物がいるのが見えた。

「レイフォルト!!」

その声にその男は反応する。

「兄貴!マズイ事になってる」

レイフォルトは走り回る男捕まえて何か吐かせていた。
ディクセンは近づくと男は既に気を失っていたがそんな事はどうでも良かった。

「アリスのバカ、天翼族の子ども庇って森に向かったらしい」

ちっと小さく舌打ちをすると踵を翻し森へと向く。

「待ってください。どうか私達も連れて行って下さい」

そう言うと気を失った男の奥からフードを被った二人組が現れた。
ディクセンは一瞬のうちに理解した。

この二人を護る為にアリスは一人で囮になったと言う事を。
そして今アリスは森にいると言う事。
あれほど出かけるなと言っておいたのに・・・。

こうしてディクセン達はアリスを追い森の中へと入って行くのだった。
あの忠告も空しく・・・。

 

 


四人の後姿を確認し青髪の男がタバコをふかす。

「やっぱり行っちまうのか・・・」

その脇にはあの仮面の男が立ち笑う。

「運命とはそう変えられるものではないのですよ」

そう言うと2人は闇に消えていく。

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