
「偶然と必然の間にある運命に導かれて二人は…」
第一話「雪の中のふたり」
ある日、それはとても寒い日だったの覚えてる。
珍しく都心では雪が降った。
僕はそんな中、早く帰路に着こうと急いでいた。
そして…『彼女』と出逢った。
雪の中、何時間もそこに佇んでいたんだろう。
ランドセルや彼女の綺麗な金髪に雪が積もっていた。
僕にはそれを無視することは出来なかった。
僕は自然にその横に立った。
少女はそれに気がつき僕を見上げた。
その瞳は恐ろしく綺麗で目が離せなかった。
「何してるデスか?」
少女の声が響く。
透き通るような、天使の声というものがあるのならこういうものなんだと思い一瞬戸惑ってしまう。
「理由はないんだ…ただ、君が風邪を引くんじゃないかと思って」
「サフィーは求めてないデスよ?」
「うん。僕の自己満足だから」
そう言うと少女はまた雑踏へと瞳を向ける。
あまり僕に関心ないようだ。
僕も雑踏へと瞳を向ける。
雪で転ぶ人もいる、急ぎながらも恐る恐る歩く人もいる。
駅前は少しパニックになってる。
「君、いくつ?こんな時間にこんなところにいて親に怒られないかい?」
少し黙って不満そうに雑踏を見つめながら答えてくれた。
「そんな事、知ってどうするデスか?おニィさんには関係ないデス」
バッサリと切られ苦笑いする。
小学生にしてはしっかりしてるようだが、少しカタコトなのは日本人じゃないからだろうか?
「アレ?その制服、近くのお嬢様学校のだよね?」
「アレコレ詮索するのは良くないデス」
そっけない態度で答える。
「サフィーのことはほっておいて向こうに行くデス」
「んー……でも、君みたいな女の子を置いて行くわけにはいかないし……」
んーんと悩む。
その横で不思議そうにちらっと見つめるサフィーの姿があった。
「じゃぁ、せめてコレ、さしておきなよ」
そういうと傘を差し出す。
「知らない人からの施しなんか受けないデス」
「僕は望月剣護(もちづき けんご)。君はサフィーちゃんだよね?
ほら、もう知り合いだ。この傘はここに置いていくから気がむいたら使ってね。それじゃ、サフィーちゃん」
そう言って剣護はその場を立ち去った。
自分も雪に濡れてしまうことなど関係ないように……。
「本当に迷惑デス」
そう言って傘を手に雑踏へと消えていくサフィーの姿があった。